医療・製薬業界に押し寄せるデジタル化の波への処方箋
さまざまなデジタル技術が、ヘルスケア産業における変革のスピードを加速させている。医療によるデジタル技術の本質は、IoT(モノのインターネット)をはじめとしたさまざまな技術の発達により、これまで分断されていた、患者と医療機関、製薬企業、医療機器メーカーがシームレスにつながることにある。それによって、ヘルスケア産業に関わる企業からは、最終顧客(患者)の実態がはっきりと見えてくるだけでなく、患者にどのようなアウトカム、価値をもたらすことができたのかを把握できるように変わっていく。
さらに、デジタル技術により、患者の生活のあらゆるシーンで情報が取得可能になる。そのデータを解析することで、自社が提供している製品や技術が患者に対してどんな条件、状態の時に役に立つのかを把握し、その結果を研究開発にも活かすという、消費財のようなフィードバックループが回り始める可能性がある。
業界横並びから脱し、独自のビジネスモデル、エコシステム構築へ
患者への価値提供やアウトカムを実現するには、自社の製品を売るだけでなく、製品以外の技術やサービスを組み合わせたソリューションが欠かせない。これを実現するには、自社単独では不可能であり、さまざまな企業との提携が必要だ。また、ヘルスケア業界には、多くの患者との接点を持つ他業種の企業の参入も始まっており、そうした新興企業を相手に、競争、協業をしなければならない。
従来のヘルスケア関連企業は、既定路線を離れ、独自のビジネスモデル、エコシステムを構築することが生き残りの必須条件となる。本書では、その具体策を提示する。冒頭には「日本語版特別章」を40ページにわたって設け、日本の事情に合ったデジタル経営戦略と新ビジネスモデルを詳述する。