豪商の家に生まれながら、下積みの役者として歌舞伎に身を献げた中村秀十郎という人がいた。その生き方に共感した著者の巧みな筆捌き、江戸弁の語りも冴える芸談聞書き「黒衣」等と、克明な伝記「秀十郎夜話」等とが、生涯陰にいた人間に照明を当てる。(解説 : 渡辺 保)