遺棄された戦場の国レバノン、揺れるアラブの盟主シリア、サバイバルに賭ける王国ヨルダン、安全保障という悪夢を抱えるイスラエル、国なき悲劇の民族クルド-。中東は一枚岩ではなく、どんな精密な理論にもあてはまらない錯綜した情況にある。本書は、通信社の特派員として中東の十カ国を飛び回った著者が、既存の「中東の常識」を白紙に戻し、ジャーナリストとして実際に現場を踏んで自分の目と耳で確かめた事実を克明に記録したルポルタージュである。