文章、本(古本)、旅、そして酒……。生誕120年を迎えた私小説作家・上林曉が愛し、書き綴った題材を、全生涯にわたるエッセイから精選。井伏鱒二、太宰治をはじめ、阿佐ヶ谷文士たちとの交遊、禁酒生活、思い出の本など、上林随筆の魅力が詰まった珠玉の一冊。愛書家の心に染み入る随想集。文庫オリジナル。
目次より
[文]文学の二十年*/私の小説勉強/嘉村礒多の葉書/僕の文学開眼/武蔵野文章/まともな文章*/私小説十年/本気の勉強/作家の心
[本]荻窪の古本市*/ブランデン氏の記念品/大正の本/古本漁り*/本道楽*/故郷の本箱*/座右の書*/「神曲」が三冊揃う話*/全集について/なつかしき思い出の本/「薔薇盗人」について
[旅]金桁温泉と奴留湯/法隆寺の敬礼/野に出て/甲州御坂峠*/木曽馬籠*/京都の思い出*/旅行上手と旅行下手*/旅の絵葉書*/鎮西遠望*/「イタリアの旅」まえがき/四万十川の舟遊び/伊豆での正月
[酒]古木さん/我が交遊記/文壇酒友録*/阿佐ヶ谷案内*/阿佐ヶ谷会/酒わすれ*/酒解禁*/一酒徒*/二級酒*/酒のこと
[人]酒匂郁也君を憶う/署名帖/山のホテルの人々/川端康成/宇野浩二/正宗白鳥会見記/斎藤謙太郎君の思い出/梅雨――太宰治のことなど/律儀な井伏鱒二/浜本浩との因縁/追憶(堀辰雄)/高根の花/「枯木のある風景」の出来るまで
(*は五月書房版『文と本と旅と』の収録作)