英娘鏖
はなさいてみのらぬむすめみなごろし
現世(うつしよ)のカオスにひそむ言葉の華麗な万華鏡(ミクロコスモス)
────谷川俊太郎
『いつかたこぶねになる日』などエッセイでも活躍する俳人・小津夜景。
田中裕明賞を受賞した『フラワーズ・カンフー』に続く6年ぶりの第二句集。
【収録句より】
漣が笑ふいそぎんちやくの朝
〓生(あ)れて死んで愛してゐた時間
莨火(たばこび)を消して裸足の身を焦がす
香水のちがふ白河夜船かな
パピルスや死後千年の音階図
君の瞳(め)を泳ぐおらんだししがしら
かささぎのこぼす涙をおつまみに
露実るメガロポリスよ胸も髪も
逃げ去りし夜ほど匂ふ水はなく
後朝のキリマンジャロの深さかな