美術館に行っても何も感じないと悩むあなたのための美学入門
これまで重視されてきた美的判断ではなく、対象にふれる際の人間の「注意」と「経験」に着目し、異文化における美的経験の理解も視野に入れた、平易かつ大胆、斬新な、美学へのいざない。
「本書は入門書であると同時に、著者の色(=美学観)が比較的はっきりと打ち出された一つの美学書でもある。カントや美的判断に対する手厳しい批判など、入門書としてはいささか異例の記述が見られるのは、その証左である。一方で本書は――たとえば四つの美学説の批判的検討が美学史の簡単な紹介も兼ねている、というように――、啓蒙的な内容ももちろん含むし、何より(狭義の芸術に限らない)身近な例を用いつつ平易な語り口で進み、前提知識なしに読んでも美学という学問のイメージをつかめるという点では、一般的な入門書の役割を十分果たしてもいる。」(訳者解説より)
原書 Aesthetics: A Very Short Introduction, Oxford University Press, 2019
◎目次
第一章 美術館で迷子
非エリート主義的美学 美学か芸術哲学か 非「西洋」の美学
第二章 セックス、ドラッグ、ロックンロール
美? 快楽? 感情? それ自体のために? 注意?
第三章 経験と注意
注意から生じる違い 注意の焦点 注意の払い方 知覚の自由 美的注意
第四章 美学と自己
自己を変える、美学を変える 経験 vs. 判断 若いころの美的経験
経験の優位性 なぜ判断なのか グローバルになること
第五章 美学と他者
美学的な意見の一致と相違 美学は監督するためのものではない
実生活における美学的な意見の相違 実生活における美学的な意見の一致
美学的な謙虚さ
第六章 美学と人生
芸術作品としての人生? みずからの人生の観客?
冷めてしまわないための方法 甘い期待と、それほど甘くない期待
新たに見ること いつまでも残る効果
第七章 グローバルな美学
視覚の地理学 グローバルな語彙 美術館でさらに迷子
美学的な謙虚さふたたび