• 著者松岡憲司
  • 出版社新評論
  • ISBN9784794810328
  • 発行2016年3月

人口減少化における地域経済の再生 / 京都・滋賀・徳島に見る取り組み

長期不況、財政危機、グローバル化、高齢化、人口減少は、日本経済全体だけでなく地域経済にも深刻な影響を及ぼしている。このような経済の環境変化の下、新しい地域経済モデルの構築が焦眉の課題となって久しい。高齢者や女性の経済市場への参加促進、Uターン・JターンやIターンによる人口減の食い止めといった方策に共通するのは、生活と調和する働き方、つまりワーク・ライフ・バランスが求められているという点である。  都市の生活においては、仕事に追われ生活がないがしろにされがちである。とりわけ女性には往々にして家事と仕事で二重の負荷がかかり、ワーク・ライフ・バランスを保つことが難しい。その解決策の一つと考えられているのが、在宅勤務やモバイル勤務などのテレワークである。また、これまでの地域産業政策に欠けていた、農林畜水産業と商工業を結びつける動きも近年活発化している。商工業の側からは「農商工連携」、農林畜水産業の側からは「六次産業化」と呼ばれる動きである。  本書は、京都府北部地域・徳島県・滋賀県の事例をもとに、特に人口減少化の中で地域が生き残りと再生を図るにはどのような方策がありうるかを検討したものである。京都府北部では伝統的な織物産業の分野で、若手経営者らがグローバル化にチャレンジしている。徳島県上勝町では、「葉っぱ」を「つまもの」として売り出すことで新たな市場を開拓した。また同県神山町や美波町では、山間部や漁村に東京などのIT企業のサテライトオフィスを誘致することで地域再生に取り組んでいる。その他、女性企業家の新ビジネスや各地の農商工連携・六次産業化など多彩な取り組みを通じて、ワーク・ライフ・バランスをも視野に入れた新たな地域経済モデルの可能性を展望できればと思う。(まつおか・けんじ)

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