十年前、三千九十五人が一瞬にして消え去った故郷に、沙弓は戻ってきた。その街では既にない図書館から本が借りられたり、廃線の路線バスの光が見えたりと、消えた彼らの存在が強く感じられるのだ。だが、その気配が徐々に薄れ始めて…。沙弓は事件の「傷」と闘いながら、残された人々もまた葛藤している姿を目にする。人々の営みが胸を打つ感動長編、待望の文庫化。