「死」と言われて思い浮かべる風景-地獄。生前、悪行を為した者は、三途の川の岸辺で奪衣婆に衣服を剥がれ、閻魔大王の裁きをうけて、剣の山や火炎地獄、血の池地獄など、果てしない冥界めぐりに追いたてられるという。日本人の心の奥底に刻みこまれた、こんな死後の世界のイメージは、実は、現世が逆照射された風景だった。「十界曼荼羅」「地蔵十王経」など、数々の地獄絵にも残されているあの世観から、今に息づく日本の原風景をさぐる地獄の文化史。