一期一会の人情ごはん。気鋭の作家が描く連作短編集。あの日、ぼくは初めてあやめさんを食事に誘った。銀座裏通りにある、小洒落た建物の「四月一日(わたぬき)亭」へ……。オムレットにメンチボール、カットレット、特別な日に食べるホワイトライス――誰かと一緒に食べる料理は、じんわり心に沁みてくる。大正末期、日本が自由で穏やかだった時代。懸命に、ひたむきに生きる人々が集う、美味しい西洋料理店。