本書は、戦時下における社会保障の政策主体の形成及び社会保障の有力制度の成立・発展について跡づける。厚生省、国民健康保険制度、労働者年金保険制度の創設そのものは戦時下日本の社会構造の急激かつ巨大な変革であったが、筆者は、その変革過程の主役を「国家」「政府」「資本家階級」という抽象的な概念で把握するのではなく、より具体的に陸軍省、内務省、逓信省、商工省、厚生省、近衛内閣、日本医師会、産業組合、官僚たちなどの集団・個人に焦点をあてて分析することとした。