考古学は、おもに発掘によって、ずっとむかしの遺跡や道具などを研究し、とおい人類の歴史や文化をあきらかにする学問ですが、この考古学がたいへんに進んだのは、十九世紀のことでした。そしてシュリーマンのトロイア発掘は、人をおどろかす大事件でした。神話とホメロスの世界をもとめてすすんだシュリーマンは、人類のすばらしい遺産である、こうした一世界への扉をおし開いたのでした。本書は、考古学者シュリーマンの業績をのべるものではなく、人間像をえがきだすのに力点をおいた伝奇小説である。