触れたればひんやり安心するやうなナイフになりたし春風のなか誰しもが何かに傷つけられているこの時代。感情をきれいに断ち切るナイフが、むしろ安らぎの象徴となるだろう。そんな鋭利な心をかかえて、この人は風のなかに立つ。移ろう季節に、疫禍の街に、教室の少年少女たちに、そして、透明な苦悩を負いすぎた私たちの胸に、野田さんの歌は静かに響く。・・・黒瀬珂瀾「帯」より