「フェルナンド・ペソアFernando Pessoaの名前は、ストラヴィンスキー、ピカソ、ジョイス、ブラック、フレーブニコフ、ル・コルビュジエといった1880年代生まれの偉大な世界的芸術家たちのリストのなかに入れられるべきだ。彼らの特徴がすべてこのポルトガルの詩人に凝縮されて見出される」とロマン・ヤコブソンは述べた。ペソアという名の劇場に、アルベルト・カエイロ、リカルド・レイス、アルヴァロ・デ・カンポスといった異名者たちが仮面をつけて登場する。かくして、デカルト以降の自我の神話は解体される。マラルメが無名性として、ランボーが他者として現出させたポエジーが、ペソアによって複数性として立ち上がる。「私は誰でもあり、誰でもない。私はすべてであり、無だ」。プラトンはミメシスの徒である詩人を国家から追放したが、ペソアはミメシスを称揚する。ミメシスという身振りを共振によって共有すること、それこそがペソアを読むという希有な体験だ。本書では、複数詩人ペソアの主要な異名者3人と本人名義の代表作を収録した。