◆言葉にできないものをいかに伝えるか?◆
コミュニケーションの神髄は、単に何かを効率よく伝えることにあるのではな く、言葉にしがたいものを抱えながら、なおそれを表現しようとするところに あるのではないでしょうか。オーケストラも、構成員のそのような格闘のなか から、音が生まれ、音楽が生成されます。本書は人間の行為を個人の視点から みる心理学ではなく、個人と社会・文化の緊張しあう中間世界からとらえる行 為論を、西田幾多郎、木村素衛、ヴィゴツキー、木村敏らの思想をたどりつつ 呈示し、オルフェウス室内管弦楽団と学生オーケストラの練習のしかたのなか に、そのような協同的な実践のすがたをみてゆきます。心理学の新しい方向を 指し示す、刺激に満ちた一冊です。著者は、北海道大学特任教授。