科学が語る事実 友田医師が初めて児童虐待の事例に出会ったのは、30年近くも前、救命救急センターで当直していた夜、3歳の男の子が瀕死の状態で運ばれてきたときでした。男の子は、頭部打撲で頭蓋内出血しており、身体には、無数のタバコの火傷跡や傷がありました。その後、虐待された人たちのこころのケアに取り組むと共に、虐待が脳に与える影響を研究してきた友田医師は、虐待が脳を変えてしまうという事実を多くの人に伝え、虐待の恐ろしさを知ってもらうことを使命と考え、研究のかたわら、講演や専門書、新書の出版を通して、啓蒙活動を続けてきました。しかし脳科学の話を、理論やデータを省略せずに一般の人びとにもわかりやすく伝えるのは難しいことです。そこで本書は、友田医師の研究室で働く共著者の藤澤がライターとなり、二人が緊密に議論しながら書かれました。共に子を持つ母親として親の気持ちにも寄り添いながら、科学に興味を持つ人の知的関心にも応える一書です。