マンガや映画の世界でしかなかった「忍者」が、現実のものとしてテレビなどで紹介されることが多くなった。それが理由だろうか、近年では外国人が忍術体験をするという機会が多い。念のために言うが、彼らが求めているのはエンターテインメントではなく、忍者の哲学や日本文化である。現代生活に忍術を取り入れて、今後の生き方に活かそうとしているのだ。
さて、筆者が忍者を職業にしたきっかけは、リーマンショック(2008年)と東日本大震災(2011年)である。これらが理由で、金融資本主義の崩壊や国家概念の変化が起こると感じた。つまり、既存のルールや組織のあり方では通用しなくなると思い、東京都あきる野市養沢という山里に移り住んで忍者になり、「野人流忍術(野忍)」を立ち上げたのだ。
運営方式としてベンチマークしているのは「ボーイスカウト」や「OBS(アウトワード・バウンド・スクール)※」である。どちらもイギリス発祥のもので、青少年や一般人を対象にした野外活動のスクールである。よって、単に「奇をてらった」ものではなく、山里に息づく日本文化の真髄を国内外に発信・啓蒙することを目的としている。
活動内容を紹介しよう。幼稚園や自治体、企業から、研修の一環として「野忍」が提供している「忍術修行プログラム」などを採用してもらっている。また、2016年からは「かながわ西部コンベンションビューロー(DMO)」の専任忍者として、毎年八月に小田原城内で行われる「風魔まつり」などに出演し、「忍者」をキーワードにして活動を展開している。これらの活動の様子や、「礼を尽くして隙を見せず」という日本文化の概念などを本書で伝えていくのだが、筆者が一番知りたいのは、読者のみなさんの「変化」である。