この本は、主に私が出会い、いっしよに悲しみ、怒り、闘ってきた人について書いている。「人」を書いたのであって、「病気」を書いたのではない。病にたおれた人とそれを見守る人の、悲しみとぬくもりを書きたかったのである。「人」のみせてくれた"生きざま""死にざま"はそれぞれ私には感銘深い。その中で、時の風化に耐え、なお鮮やかに脳裏に甦る情景を書き綴った。ここにおさめた三十余話の小話に、私はそんな"生きていること"の無言の主張を託した。