久野原僚は、初老の美術収集家。-しかしそれは表向きの顔、実は彼はキャリア四十年のベテランの「宝石泥棒」なのだ。ある夜、久野原はダイヤモンド「月のしずく」を狙って、富豪の屋敷に忍び込んだ。ところが、「月のしずく」はすでに何者かによって盗まれた後だった!屋敷の使用人・江田邦也が疑われ、彼はそれを苦に自殺してしまう。後味の悪い結果になったこの出来事を忘れるため、久野原はヨーロッパに旅に出た。だが、旅先で江田邦也の恋人・美鈴と出会った彼は、更なる事件に巻き込まれていく…。角川文庫50周年特別書き下ろし作品。