本書のテーマである『「老人と子供」統合ケア』は、高齢者ケアの新しい姿を追及するなかで登場したものである。例えば「おもちゃ美術館」を老人ホームや病院などのなかにつくり、地域の子どもたちがそこに自由に出入りできるようにすることで、世代間交流や地域に開かれたケアの姿を実現させていく、といった試みがすでに始まっている。本書は、こうした新しいケアの試みについて、さまざまな分野の実践家や研究者が集まり、研究会を行ってきた成果をまとめたもの。その内容は多岐にわたり、なぜ今こうしたケアが求められるのかという基本論から、統合ケアのもたらす効果についての実証調査、日本国内での現状に関する自治体アンケート、先駆的な取り組みに関するケース・スタディないし実例報告、そして「老人と子ども」統合ケアを積極的に進めている諸外国の動向調査(フィンランド、イギリスなど)を含む内容となっている。