冴えない事務員とばかり思っていた20近くも年上の女に恋のトラブルを解決してもらった僕は、同じ日の夜、その女とほの暗い店の橙色の明かりの下で酒を飲んだ。昼間のもめ事についてくどくど詮索されることを恐れていると、女は放心したように、ほつりほつりと語りはじめた-。僕はすい込まれるように聞き入る、永くせつない彼女の恋の話に。都市の人々のこころを謳うストーリーテラー山本文緒、渾身の恋愛文学770枚誕生。