音律とは、音の基準である。この基準は、古代より、時代の流れや民族の独自性によってさまざまに変化してきた。音律が宇宙論に関係したり、国家を支える尺度になっていた時代もある。現代では、ピアノに適用された十二平均律がその基準となっているが、その音律が生み出す規格化された響きが、われわれの自由な耳の感性を束縛している。音律の変遷を古代ギリシャから古代中国、アラブ、西欧までたどり、最後に現代の作曲家や著者自身の、純正調による、耳の感性を取り戻すための新しい試みを紹介する。