本書は、近年の「心理学と教育実践の間を埋めよう」とする試みを否定するものではないが、これらとはかなり趣を異にする。それは、心理学と教育実践の間を「埋めよう」とする以前に、そもそも心理学研究の営みは教育実践とどういう関わりを持ってきたのかという点についての反省、また、教育実践という実践を「研究する」ということはそもそも可能なのかについての根源的な問いから出発しようという点である。このような批判的な問い直しの観点が、これまでの研究には欠落していたのではないかという著者共通の認識に基づいてまとめられたものである。