福沢諭吉、中上川彦次郎の薫陶を受け、実業界に入った武藤山治は創業社長として「鐘紡」を一流企業に育て上げ、温情主義など先駆的な経営を実践した。一方、大正末期からは政治家・言論人として立ち、政・官・財の癒着を厳しく追及、時事新報紙上で「帝人疑獄」を告発した。日本資本主義の黎明期を駆け抜け、テロリストの凶弾に倒れた六十七年の波瀾の人生を描き、現代を鮮やかに照射する力作。