多数の死者を出したシベリア抑留については多くの証言がある。だが、アメリカに生まれた日系二世が日本人としてではあるが、抑留されたケースは珍しい。戦争の時代、数奇な運命を生き抜いた貴重な回想録。
--カリフォルニア州に生まれた佐野は1939年(昭和14)に子どものない伯父の養子として日本に渡る。1945年(昭和20)3月、日本陸軍に徴兵され、満州の関東軍に送られる。5カ月後日本はソ連に降参し、佐野は捕虜として3年間シベリアの軍需工場、集団農場、炭坑での労働を強いられる。 本書は、分裂した義務感、失望と混乱、そして犠牲と救いの話である。著者は自分の運命を受け入れながら、希望を棄てずに控え目な表現で書いている。生き生きとした思い出の記であり、時代の証言である。--(『バターン死の行進』の著者、スタンレー・フォルク評)