維新前夜、一瞬の光芒のごとく時代を駆け抜けた吉田松陰。かれは後半生を過ごした萩・野山獄で、一人の女囚・高須久子と出会う。本書は、数首の和歌とわずかな句によって見え隠れする久子の人物像を、近年発見された史料から詳らかにし、久子との交流によって更に深められた松陰の人間解放への志を明らかにする。時代を背負い、時代と壮絶に対決した若き思想家の精神の軌跡を辿り、新たな人間像を描きだすヒューマン・ドキュメントである。