木綿が普及する以前、原料植物の栽培・採取からはじめて、生地を織り上げるまで一貫して自給性が強い手間暇のかかる衣生活を、ほとんどの日本人は強いられていた。しかし、栽培と製品化の分業が可能で生産性も高く、保温力・着ごこちともに優れ、しかも多彩な染色ができる木綿栽培の拡大は、それまでの日本人の暮らしに大変革をもたらした。衣生活はもとより、近世社会繁栄の要因の1つともいえる木綿の大衆化に至る過程を検証する。