ピンホールを通して外界の風景を捉える装置、「写真鏡(カメラ・オブスキュラ)」。カメラの前身になったといわれるこの機器を通すと、人間の視覚が捉える映像を、客観的に写しとることができる。ダ・ヴィンチやフェルメールなど西洋の画家たちはこの写真鏡を用いて下絵をトレースし、日本では洋風画の先駆者らが取り入れた。カメラマンでもある著者が、人間の目に映った映像がどのように絵画作品になっていったのか、写真鏡をとおして東西美術史を検討しなおす。