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  • 著者田崎健太
  • 出版社講談社
  • ISBN9784062174749
  • 発行2011年12月

偶然完全勝新太郎伝

こんな痛快な男はもうどこにもいない。「大統領や首相の代わりはできるけど、勝新の代わりは誰ができるんだ?」「今後はパンツをはかないようにする」「俺としゃぶしゃぶか? 一つ“シャブ”が多いんじゃないか?」「最後の弟子」が描く「最後の役者」勝新の真実。みんな勝新が大好きだった。
「大統領や首相の代わりはできるけど、勝新の代わりは誰ができるんだ?」
「今後はパンツをはかないようにする」
「俺としゃぶしゃぶか? 一つ“シャブ”が多いんじゃないか?」
――みんな勝新が大好きだった――
巨大なベンツで夜ごと銀座に繰り出し、一見怖いけど本当は人懐っこくてやさしい昭和の大スター、1931年11月29日生まれの勝新太郎は、2011年、生誕80年という節目の年を迎えました。また、来年は、いまも日本映画史に燦然と輝く勝新の代表作『座頭市』シリーズの初公開(1962年)から、ちょうど50年になります。
著者は、かつて『週刊ポスト』に連載されていた勝新による人生相談の担当編集者で、晩年の勝新と濃密な時間を過ごした「最後の弟子」です。
「映画よりもおもしろい人生を歩んだ勝新太郎をもっと知ってほしい」
「この生き様こそ、勝新太郎の最大の作品ではないか」
 かねてからこんな思いを抱き、勝の最後の「弟子」を自任する著者が、多くの関係者に取材を重ね、新たなエピソードを次々と発掘。豪傑を絵に描いたような人間・勝新太郎の「素顔」に迫ります。
以下、プロローグより一部抜粋
 ぼくは勝新太郎の最後の「弟子」だった。ただ、ぼくは役者でも映画関係者でもない。三味線や長唄を教わったわけでもない。いわば、「 」(括弧)つきの弟子だ。
 かつて、勝は週刊誌で人生相談を連載しており、ぼくはその担当編集者だった。週一回、二ページの連載にもかかわらず、ほぼ毎日彼のところに通った時期もあった。
 いつもこんな風だ。
 昼前に彼の自宅で待ち合わせ、昼食に出かける。山王下の日枝神社近くにあった蕎麦屋が多かった。
 店に入ると、ビールと一緒にかき揚げや板わさを頼んだ。白木のテーブルに運ばれてきた黄金色をしたかき揚げを、勝は箸で潰して分け、「食べな」とぼくに勧めた。揚げたてのかき揚げは、口の中に入れると香ばしい味がした。当時、二十代半ばだったぼくにとって、昼間から蕎麦屋で酒を飲むのは、大人の世界を覗いたような気分だった。
 ざる蕎麦には、日本酒を掛けてほぐすのが勝の食べ方だった。初めて一緒に蕎麦を食べた時、「ちょっと待て、そこまでだ」と箸を止めさせられた。……

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