講談社創業100周年記念出版 刊行開始!
この「大征服」は、誰にも予想できなかった
文明の空白地帯、7世紀のアラビア半島で誕生したイスラーム。世界帝国を創出した共存と融和の原理とは。20世紀初めに、最後のイスラーム帝国が滅んだとき何が起こったのか。現代にいたる「力による布教」のイメージを問い直す。
■イスラームの誕生から、ビン・ラーディンまで、歴史と現代を1冊でとらえる!
現在も日々報道されるイスラーム世界の紛争や混迷――。これらは、イスラーム社会の歴史のなかで生じた根深い問題だといえるでしょう。しかし、従来こうしたイスラーム世界の諸問題は、20世紀初頭のオスマン帝国崩壊までを扱う前近代史か、逆に、20世紀の「現代中東政治」の文脈で解説されることが多く、私たち日本人にとっては全体像がみえにくいジャンルでした。本書の著者・小杉泰氏は、イスラームの誕生から、帝国の発展、衰退、そしてまさに今現在のイスラーム復興運動までを大きくひとつの流れとしてとらえる数少ない研究者です。
■イスラームがめざしたものは、国家でも帝国でもなく、「社会」だった
イスラームは何より宗教に基づく社会の建設をめざしました。イスラームの教えに立脚した社会生活を営むために必要な規律や仕組みが、ムハンマドを慕うごく少数の信徒の集まりから、共同体、国家へと発展していく過程で形成されていったのです。歴史上のイスラーム帝国は解体し栄光とともに消え去っても、イスラームがその強さを失わないのは、そのあたりに理由があるのでしょう。
■ジハードは「聖戦」か? 「右手に剣、左手にコーラン」は西欧の偏見だった
近年では、9.11同時多発テロ事件をきっかけとして、イスラームの「ジハード」に強い社会的関心が集まり、ジハードをテロと結びつける短絡的な議論さえ生まれています。小杉氏は「ジハードはしばしば聖戦と訳されるが、それはごく一面に過ぎない」「イスラーム世界と国際社会が有意義な対話と問題解決に臨むためには、ジハードを本来の意味で理解することが必要である」と述べています。