専制と植民の帝国 300年の光と闇
ヨーロッパとアジアの間で皇帝たちは揺れ続けた
広大無辺の大地で、人びとは「よきツァーリ」を求め続けた。王朝の創始から、ピョートル大帝と女帝エカテリーナの改革、ナポレオンとの対決を経て、皇帝一族の悲劇的な最期まで。そして、ソヴィエトはロシアに何をもたらしたのか。信仰に支えられた社会と、専制君主の群像を描く。
■王朝前史からソヴィエト崩壊まで。広大無辺を誇る多民族国家の通史。
「ロシア」は初めから現在のような「大国」だったわけではありません。しかし、チェチェン紛争をはじめとする民族問題や、シベリアの資源開発など、現在の「ロシアが抱える問題」の多くは、帝政ロシア時代にすでに始まっていました。本書は、ロマノフ王朝の300年を中心に、その継承国家であるソ連邦の74年間をも通観し、多民族帝国の成り立ちから崩壊までを描きます。
■「よきツァーリ」とは何か? 個性的な専制君主を輩出した、ロマノフ家の300年。
ロシア皇帝=ツァーリは、個性的なキャラクター揃いです。大改革を強行したピョートル大帝と皇太子アレクセイの確執、女帝エカテリーナ2世と寵臣ポチョムキンの愛、ナポレオンを敗走させたアレクサンドル1世、革命の中で銃殺されたニコライ2世一家……。壮麗な大宮殿を建設し、「よきツァーリ」「強いツァーリ」たらんと奮闘を続けたロマノフ家の群像と、暗殺・謀略に満ちた権力のドラマ。
■戦争と植民、そして信仰――。ヨーロッパとアジアの間に生きた民衆と、社会を描く。
騎馬遊牧民との長い敵対、シベリア・中央アジアへの移住と植民。こうしたロシア特有の地理的条件は、歴史に何をおよぼしたのでしょうか。そして「第三のローマ」モスクワを中心にロシア社会に根をおろし、ソヴィエト崩壊後に復活を果たした「キリスト教」は? 著者・土肥氏は、専門とする「社会史」の観点から、単なる「ロマノフ王朝史」ではない、新しい「ロシア史」を試みています。