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  • 著者寺島俊穂
  • 出版社三和書籍
  • ISBN9784862512840
  • 発行2017年11月

復刻版戦争放棄編 / 参議院事務局編『帝国憲法改正審議録戦争放棄編』抜粋(1952年)

◆戦後の混沌の中で日本が立ち向かった最初の仕事
 戦後の混沌の中で、日本が最初に取り組まなければならなかったのは、敗戦で痛めつけられた日本人の心の指針を持つこと、つまり、新しい憲法を起草することだった。しかも、世界に例のない「戦争放棄」「軍備全廃」という堅い決心のもと、日本の再建をするための基本的な考え方を示すことだった。
◆幣原喜重郎は憲法の中に、未来永劫戦争をしないようにするために、政治のやり方を変えることにした。
 幣原が組閣を命じられ、総理の職についたとき最初に考えたのが、国民の意思を実現することだった。終戦の日に見た電車での光景を思い出した。男が叫んでいる。「俺たちは知らん間に戦争に引き入れられて、知らん間に降参する。勝った、勝ったと思っていたら、足も腰も立たぬほど負けたんじゃないか。怪しからん。騙し討ちだ。」自らの意思でもない悲惨な戦争を、国民に味あわせてはいけない。幣原は、この情景を見て、堅い決心をした。「戦争を放棄」し、「軍備を全廃」してどこまでも民主主義に徹しなければいけない。この信念を憲法に吹き込む決意だった。この憲法は日本人の意思に反して作ったんじゃないかという問いは、幣原には無用の質問だった。
◆多くの武力を持つことは、財政を破綻させること
 生きるか殺されるかという問題になると、今の戦争のやり方で行けば、たとえ兵隊を持っていても、殺されるときには殺される。しかも多くの武力を持つことは、財政を破綻させ、したがってわれわれは飯が食えなくなるのであるから、むしろ手に一兵も持たない方が、かえって安心だということになるのだ。
◆起草にあたっては二晩も徹夜したこともあり、難航した
 いよいよ憲法草案の審議にかかると、ある規定は少し進みすぎて、世の非難を受けるだろうという心配もあり、起草に関係した人たちは二晩も徹夜したことがある。相当難航を続けたが、「戦争の放棄」ということは、その中でも最重要な案件の一つだった。

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