シューマンの音楽は、甘美で、鮮烈で、豊かで、そして、血なまぐさい――。
シューマンに憑かれた天才美少年ピアニスト、永嶺修人。彼に焦がれる音大受験生の「わたし」。卒業式の夜、彼らが通う高校で女子生徒が殺害された。現場に居合わせた修人はその後、ピアニストとして致命的な怪我を指に負い、事件は未解決のまま30余年の年月が流れる。そんなある日「わたし」の元に、修人が外国でシューマンを弾いていたいう「ありえない」噂が伝わる。修人の指にいったいなにが起きたのか――。
野間文学賞受賞後初の鮮やかな手さばきで奏でる書き下ろし長編小説。
著者紹介
1956年、山形県生まれ。国際基督教大学教養学部人文科学科卒業。同大学院修士課程修了(博士課程中退)。現在、近畿大学教授。1993年『ノヴァーリスの引用』で野間文芸新人賞、1994年『石の来歴』で芥川賞受賞。2009年『神器 軍艦「橿原」殺人事件』で野間文芸賞受賞。著書に『バナールな現象』『『吾輩は猫である』殺人事件』『グランド・ミステリー』 『鳥類学者のファンタジア』『浪漫的な行軍の記録』『新・地底旅行』『モーダルな事象-桑潟幸一助教授のスタイリッシュな生活』などがある。