……この村は虚構の村ですよ。でもねえ、ここに来る途中にも云いましたが、虚構と現実に差なんてないんですよ。「知りたいですか」。郷土史家・堂島なる男の蠱惑(こわく)的な囁きは、関口巽を杳冥(ようめい)の中へと連れ去った。昭和十三年、伊豆韮山(にらやま)付近の集落でおきたという大量殺人は果たして“真実”なのか。かたや“死にたがる男”村上兵吉を助けた朱美は、妖しき結社「成仙道」の勧誘手口を知るが、そこにもうひとつ疑惑の影がさす。