少年の耳に残る草の呼吸や虫の羽音。落ちてくる焼夷弾の無気味な唸り。夕陽に照らされた焼跡の上をわたるジャズの響き。恐怖とともに聞いた「できたらしい」という女のひと言-昭和5年に大阪に生れてから、結婚し、大学を卒業するまでを、さまざまな《音》の記憶によって再現する。未曽有の試み-《音》で綴る自伝。