『ゴプセック』『ニュシンゲン銀行』『名うてのゴディサール』の三篇は、「人間喜劇」中のいわば「経済もの」と呼ぶべき中篇である。強欲きわまりない高利貸しの、深遠な人間観察力と壮絶な最期を描いた『ゴプセック』、大銀行家ニュシンゲン男爵の驚くべき財産形成について語る『ニュシンゲン銀行』、地方を征服すべくやってきたパリの名うてのセールスマンをめぐる滑稽話『ゴディサール』、いずれも「金銭」や「商売」をめぐるドラマを描いた傑作群である。『骨董室』、それは革命後の近代化に背を向け、旧制度を生き続ける地方貴族のサロン。これは、そこに生を承けた青年ヴィクチュルニアンのパリでの冒険と破滅の物語である。それは由緒ある家柄という純粋さの宿命であろうか?もうひとつの『ペール・ゴリオ』。