• 著者大島末男
  • 出版社清水書院
  • ISBN9784389410759
  • 発行1986年4月

カール=バルト

バルト神学は、キリスト=イエスの御業、すなわちキリストの出来事、根源的歴史の視座から、神学各論を考察する。例えば、バルトは、そのアンセルムス研究によって自己の神学的立場を確立したが、これには2つの意味がある。第1は、アンセルムスの神の名を神の啓示の出来事とみて、信仰の視座から自己の神学を確立したことである。この限り、バルト神学は聖書釈義に基づく神学である。第2に、アンセルムスの神の名は、神の名を聞いた者の思考の中に内在化された神概念から、それに対応する客体、つまり最高存在者を経て、真に実存する神を認識するまで、われわれを導く道を開通する神の啓示の出来事なのである。しかも、人間を神に導く唯一の道は、キリストであるから、バルト神学はキリスト論的神学といわれるのであり、聖書の釈義と現代の時代精神を見事に統合した神学といえるのである。

>> 続きを表示