富士山は日本一高い山であると同時に日本を象徴する山であり、その秀麗な山容は宗教的にも尊崇され、日本人の暮らしや意識のなかにこれほど溶け込んだ山もあるまい。周知のように、富士山は古代から詩歌に詠われ、歌枕のひとつであり、名所絵の画題としても描かれ、近・現代においても数多く描かれている。本書によって、古代から現代まで、描きつづけられた富岳図を集大成することは、日本の宗教や文化の歴史をたどることでもある。さらに富岳図は日本絵画史の大きな鉱脈を形成していることは周知のことであろう。また富岳図は日本人の美意識の根源にふれることができて、意義深いものがある。