もはや伝説の『雲の上団五郎一座』の劇中劇、三木のり平の切られ与三郎と、八波むと志の蝙蝠安の『与情浮名横櫛』は、それまでのアチャラカ喜劇すべてを含めても最高傑作と言えるでしょう。一九六〇年でした。著者は中学二年でこの芝居を劇場で観ました。このときはっきりと、自分が今まで好きだった笑いが「アチャラカ」であったことに気づかされたのです。それまでに観たおかしくてたまらなかった映画やテレビや舞台の大半が「アチャラカ」という枠の中に入っているような気がしました。喜劇黄金時代への招待。