聾話学校に通う娘のために、父が描いた日々の記録。
生まれながら高度難聴である娘が、聾話学校で先生との会話の題材にするため、 「宿題」として家族が毎日提出していた絵日記。
画家である父が、みずみずしく写し取った、にぎやかな家族の日々。 約30年前の1984年~1988年、娘が二歳から六歳の、 子育てのとりわけ忙しい時期に、四年にわたり描かれた日記帳からは、 描くことで難聴のわが子と対話しているかのような、 愛情にあふれた親の眼差しが感じられます。
娘は、たくさんのおしゃべりとやさしさにつつまれて、 少しずつゆっくりと、言葉を、声を、獲得していく――。
「うらら、おはなししようね。」
■日本聾話学校とは…… 東京都町田市にある日本で唯一の私立聾学校。 聴覚障がいを持つ子どもが、手話ではなく口話でのコミュニケーションを身につけ、 聴覚主導の音声言語により言葉や声を獲得するための教育を行なう学校。 家庭での様子を描いた絵日記は、 教育の題材に用いるために、学校から各家庭に「宿題」として課されていた。
■絵日記に描かれた主人公・今井麗(いまい・うらら)さん…… 装画も手掛ける注目の画家。 日本聾話学校で言葉と声を獲得したのち、 小学校からは一般校に通い多摩美術大学を卒業。 三児の母になった現在も画家として精力的に活動している。 主な装画に、角田光代『曾根崎心中』(リトルモア)、植本一子『かなわない』(タバブックス)、 椰月美智子『明日の食卓』(角川文庫)、 鴻上尚史『 ジュリエットのいない夜』(集英社)などがある。