樋口一葉は『通俗書簡文』という手紙の書き方の実用書を書いた。病の床での執筆で、生前に刊行された唯一の本である。年始の文、歌留多会のあした遺失物をかえしやる文、猫の子をもらいにやる文、離縁を乞わんという人に、などなど掌編小説さながらのストーリーが展開する"手紙文例集"を森まゆみが味わい深く読み解く。手紙を楽しみたい人、必読の書。