染職繍の図案は草花から始まり、天象地象、想像空想の域にまで及んで、甚だ多様です。しかし繍となりますと、一針ずつの連なりで文様が現されてゆくのでいささか制約が生じ、デフォルメやアレンジがものによっては極限にまで到ります。その制約を逆手にとって繍独特の持味に仕上げるという面白さがまた、新味を顕します。本書には、長年、描き溜めて繍の製作に用いていた文様の骨描きを収録しました。