「すぐにでも、出立せい、よい結果を持ち帰れよ」-将軍徳川家斉にそう直に告げられたのは、お庭番・伊吹竜之介である。本来お庭番はお目見得以下の臣であったが、家斉が信頼する竜之介はこの限りではなかった。その使命は、将軍家から密命を帯び、諸国大名の懐に潜入、内偵すること。密命は絶対で、そのために冷酷非情に徹した。羽後の国・久保田の城下町に入った竜之介は、元お庭番で旅篭屋の主人に収まった安兵衛を詮索していた。隠密の任務を放棄した者には、死を与えるしかないからである。安兵衛を追い詰めた竜之介は、果たしていかなる裁量を下すのか…。その恐るべき豪剣が驚愕の真実を暴く!!異彩を放つ無頼派作家、笹沢左保が描く超痛快!時代小説。