「都会とは恐ろしいところだ」。五年間地方で暮らし、都会に戻った私は毎朝のラッシュに呆然とする。奇妙に保たれた「秩序」、神秘を鎮めた「個と群れ」の対比、生の深層を描出する「先導獣の話」のほか、表題作「木犀の日」、「椋鳥」「陽気な夜まわり」「夜はいま」「眉雨」「秋の日」「風邪の日」「髭の子」「背中ばかりが暮れ残る」の十篇。内向の世代の旗頭・古井由吉の傑作自選短篇集。