「日本の未来をどうすべきか」参院選に投票する前にもう一回考えてみませんか?「ポストグローバル社会と日本の未来」というテーマでおじさんと若者が、ゆるゆると日本の未来について語ってみました。新自由主義(ネオリベ)に染まらない自由を!「ポストグローバル社会と日本の未来をいかに築くか」という、今の日本がもっとも考えなくてはならないこの問題に7人の論客が挑みます!
本書は、日本のグローバル化が急激に進行し、グローバリスト=ナショナリスト・イデオロギーが国内世論で支配的であった時期(安倍晋三と橋下徹と石原慎太郎が高いポピュラリティを誇っていた時代)に、それに抵抗する理論的・実践的基礎を手探りしていた人間たちの悪戦の記録として資料的に読まれる価値があるのではないかと思います。
「資料的に読まれる価値がある」と思うのは、とりあえずシンポジウムが行われていたリアルタイムでは誰からも相手にされなかったからです。メディアからはほぼ完全に黙殺されました。
しかし、偶然にも、「まえがき」のために指定された締め切りをとうに過ぎてから督促されてこれを書き出したちょうどその時に、日本維新の会の橋下徹共同代表の「慰安婦容認発言」が国外のメディアから批判の十字砲火を浴びるという事件がありました。この発言をめぐる維新の会内部の意思不統一で、グローバリスト=ナショナリスト・イデオロギーの「尖兵」として我が世の春を謳歌していた維新の会も今は解党的危機を迎えています。安倍自民党も「侵略」をめぐる首相発言、靖国集団参拝、改憲、橋下発言に対する宥和的姿勢などが中国韓国のみならずアメリカ政府の不信を招き、ナショナリスト・イデオロギーの暴走を抑制せざるを得ない状態に追い詰められています。
これら一連の「逆風」が日本におけるグローバル化趨勢が方向転換する歴史的な「転轍点」になるのかどうか、ただの挿話的出来事で終わるのか、それはまだ見通せません。でも、この20年日本を覆ってきた「支配的なイデオロギー」に対するある種の不安と倦厭感が国民の間に、ゆっくりではありますけれど、拡がりつつあるようには感じられます。
この本は2013年7月の参院選の直前に発行される予定です。選挙で、グローバリスト=ナショナリスト的政治勢力に対する有権者の信認がどれほど減るのか、それとも支持率はこれほど国外からの批判があっても高止まりしたままなのか、私は興味をもって見守っています。私たちがこの本の中でそれぞれに主張してきた言葉がすこしでも理解者を獲得してきていたのであれば選挙結果にそれなりに反映するはずです。そうなることを願っています。
(内田樹氏 はじめに 「脱グローバリズム宣言」から抜粋)