役者が舞台からそのまま降りてきたような色男、左近司多聞は、神田紺屋町の呉服屋「天満屋」の筆頭手代。だがその出生は、そる徳川家親藩、すなわち大名家のご落胤であった!十一男坊の冷や飯の不幸を見かねて母御が町へ"捨てた"のであったが、同じ境遇の親友とともに、身の回りの事件や色恋沙汰に首を突っ込み、治安に一役買っていた。ある日、川魚料理を堪能しようと深川へ出掛けた多聞。ここで夫婦を駕篭に乗せ界隈を練り歩く婚礼を目にする。ところが、野次馬でごった返す中、元藩士を浪人が斬殺、一転、修羅場と化した。大刀を大上段に構える浪人に対し、三つの流派の免許皆伝を持つ多聞が鯉口を切るが…。人情をたっぷり添えて江戸の男女を描く、好評シリーズ第二弾!書下ろし長編時代小説。