毛虫を愛する姫君、美しい姫君ならぬ租母をさらってしまう失敗譚…。「あはれ」と「をかし」の交錯する短篇物語集「堤中納言物語」は簡潔な描写とリズミカルな筆致が魅力。異腹の兄妹が男君は女装、女君は男装して宮仕えする、特異な趣向の「とりかへばや物語」。そこには外なる男と内なる女の二面性に悩む男装の美貌の姫君の苦渋が描かれる。