20年に一度、社殿を新たに造営して御神体を新宮へ遷す大祭「式年遷宮」が今年2013年の秋に伊勢神宮で行われる。1300年以上も前から続くこの行事は今年第62回目を迎えるが、昔から親しみを込めて「お伊勢さん」と呼ばれ、江戸時代には一生に一度は参詣したいお宮さんとして落語や物語などでも頻繁に取り上げられてきた伊勢神宮は、近年とみに若者、それも女性の参詣客が増えているという。それはおそらく、さまざまな雑誌やサイトなどで伊勢神宮そのものが神秘な力を宿した神々しい存在や場所として扱われ、少しでもその力にあやかれればという庶民の素朴な気持ちの表れともいえるだろう。とくに、現代のような将来が見通せない難しい時代になればなるほど、人々の心は安穏や平和な安らぎを求めて、なにか人智を超えた存在に思いをはせるようになるのではないだろうか。そして、日本においてはそれはまた多くの場合、山や海、また深い森であったりするが、人々の心が本質的に求めているものこそ、そういった太古の昔より神話の舞台となってきた大自然の姿なのかもしれない。