記紀の時代から木の神イタケルが鎮座する「木の国」とされ、森の神スサノオゆかりの「神々の地」とされた紀州熊野は近年まで、圧倒的な自然の中で、森の恵みによってのみ生きる暮らしを続けてきた。今、森の荒廃と過疎にあえぐ全国の山村に野火のごとく広がる「森林交付税構想」は、この危機を超克する新しい論理として熊野の中核・本宮で生まれた。本書は本宮の一山村を通してみた熊野の風土と人間、その復活をルポルタージュする。