ゾロアスターは多くの姿と名をもつ。預言者、魔術師、占星術師、ザラスシュトラ、ゾロアストレス、ツァラトゥストラ…「古代神学」の系譜ではモーセやピュタゴラスと並ぶ賢者としての、さらにはイエスの降誕を伝えたとされる東方三博士のはるかな祖先としての、下ってはニヒリズムの超克者たるニーチェの分身としてのゾロアスター。幾多の宗教批判者、さらに聖典の探索や儀礼の調査に赴いた東洋学者や探検家も、この謎に満ちた開祖のイメージをさまざまに彩った。本書は、ヨーロッパによるアジア理解の歴史の中にゾロアスター像の変遷を辿る、類のない文化史=精神史の試みであり、この著者にして初めて書きえた意欲作である。